タイトロープ

人生綱渡り。決心のきっかけはいつも時間切れ。

光源

映画「恋は光」を観ました。

happinet-phantom.com

 

とにかく、なーちゃん(西野七瀬さん)が可愛い。ただただ可愛い。西野七瀬史上最高に可愛い。


常々なーちゃんを見るたびに「推しメン可愛い」という気持ちが更新されていって、毎日のように感情の波が限界突破しているのだけど、それを差し引いても間違いなく、この作品で見せる西野七瀬の姿は、僕が今まで見てきた10年余で最高に可愛いと自信を持って推薦できます。

先行上映や本公開も併せて今のところ9回観ましたが、観るたびになーちゃんが可愛くなっていきます(断じて錯覚などではない)。
新聞紙は50回折って重ねると紙の厚さが地球~太陽間の距離と同じぐらいになるって話を聞いたことがあります。もし本作を50回も観たら、なーちゃんの可愛さは確実に宇宙をも飛び出してしまうことでしょう。

 

正直、僕の感想はこれに尽きる。
でもそれだとレビューにならないので、他のことも書こうと思います(笑)。

 

もう公開期間を終える館も増えてきた中で今更?って思われるかも知れないけど、言い訳をさせてもらいますと。

先行試写会で観た際に一度レビュー書いたけど、それは本公開前ということもあり、ネタバレ回避の為、内容にほとんど触れない書き方をしておきました。
だがしかしと言うか、やはりと言うか、「これから観に行く人の為のレビュー」という矛盾した要素を含む文章を書くのは、僕には難しかった。

最近あまり文章を書いていなかったので、それで燃え尽きてしまって、その後にネタバレ有りのレビューを書き直す余力が無かった、というのが言い訳。

 

でもやっぱり、観た人と感想を語り合いたいという欲求が頭をもたげてきたので、公開期間を終えつつある今の段階でなら完全ネタバレ有りの感想を吐き出しても良かろうと思いまして。

どうしても内容を知りたくない人はUターンしてもらうとして、映画観た人も、まだの人でも、話に付き合ってやっても良いよって人は読んで下さい。

※オチや重要なセリフについても触れています!

あと、万が一にもですが、このレビューを読んだ上で本作を観たいって思ってくれる 変人 優しい人が居たなら幸い。
本日(7月7日)を以て上映終了になる映画館が多いようなので、急いで映画館に向かって下さい!
ヨロシクお願いします。

 

 

--------キリトリセン--------

 

主要登場人物は4人。

主人公は「恋をしている女性が光って見える」という特殊能力を持つ男子学生・西条(さいじょう)。
そして、その主人公と関わりを持つ3人のヒロイン。
-西条と幼馴染で、西条から「恋の光が見えない」と言われている北代(きたしろ)
-「恋の定義」について思案し、そのことで西条と意気投合する東雲(しののめ)
-他人の恋人を奪うことに喜びを感じ、西条に執着する宿木 南(やどりぎ みなみ)
この4人を中心に話が進みます。
プラスもう1人の重要人物が出てくるけど、それについては後ほど。

 

先に言っておくけど、正直、タイトルからは、ありがちなキラキラ恋愛ストーリーを想像していました。その予想は、良い意味で裏切られました。
平均値から大きく外れた美男美女が偶然出会って、なんとなく両想いになって、なんとなく付き合って、なんとなく修羅場になって、なんとなく復縁して、なんとなくハッピーエンドを迎えるような物語じゃなくて本当に良かった()

 

初っ端、女性(宿木)が頭にジュースらしきものをぶちまけられるスーパースローの映像に、いきなり引き込まれました。馬場ふみかさん、人形みたいに美しい御尊顔でした。
事前にあらすじ情報を入れてから臨んだので、男性を巡るトラブルがあったのだということは、これだけで即座に理解しました。怒りを露わにした女性が退散した後、頭上に置かれたプラカップを強がり交じりに握り潰すアクションと、それを見て笑いを堪えられない北代(西野七瀬さんです)の反応を見て、この宿木も憎めないキャラクターであることが読み取れました(笑ってるなーちゃんを見て「可愛いなぁ」「笑う演技が自然で良いなぁ」ってことばっか考えてましたが)。

 

そして主人公の西条。
大学の構内ですれ違うキラキラ輝く女性たちの波を抜けて行くと、壁の向こうから輝いてない北代が現れる。

「よぉ、センセ?」(可愛い!)
「北代か」
「どぉーした?いつにも増して険しい表情だな」(言い方も可愛いし、その後でポケットに手を突っ込むのも可愛い!)

この時点で可愛いが飽和状態すぎて永遠に語れるんだけど、いちいち触れてるとレビュー進まないから自粛。ただ心の中では「メチャメチャ光輝いてるじゃん!光ってなくないよ!!!」って思いっきり叫んでたことだけ述べておきます。

ここでのやり取りや、直後の授業中の西条の表情から、彼は恋の光をとにかく鬱陶しいものだと感じていることが理解できます。

この後、ノートを拾ったことで東雲と知り合い、「恋というものを知りたい」と言い放った彼女に心惹かれたことから、彼らの物語が動き出します。

 

西条と東雲は「恋の定義」を相談し合う交換日記を始める。
この交換日記にまつわる会話が軽快で、ゆったりとしたBGMとも相まって、何とも心地好い。

最初に観た時は気付かなかったんだけど、これ2人が並んで日記を書きながら会話しているのかと思ったら違っていた。書きながら、心の中の相手と会話してるんですね。相手の姿が微妙に透けていて、リアルな存在ではないことに後から気付きました。
事実、心の中での会話はとてもスムーズなのに、食堂でリアルに対面している時は若干重たい空気が流れて、お互いなかなか口を開かない。活字好き&浮世離れしている二人ならではの、様子見的な初々しい距離感が伝わってきて非常に良いです。

 

小林監督が「東雲が西条を意識するにつれて、服装が変わってくる」みたいなことを仰っていたのだけど、それは初回に観た時に気付いた。祖母譲りのレトロなファッションセンスを持つ彼女ではあるけど、初女子会の翌日に西条と会った時は、服装も、表情も言動も、紛れもなく恋する乙女のそれであった。

東雲は、宿木との「自分自身が恋だと認識すれば、それが恋」という会話から、西条との交流で己の胸の内に生まれた温かさが「恋(らしきもの)」であることに気付き始めていた。

恋を自覚した彼女の「世界が鮮やかに見える」という言葉は、僕が大好きな漫画「四月は君の嘘」の世界観にも通じるものがあります。恋をすると、世界が彩り豊かに華やぐんですよね、解ります。

でも、彼女は結論を急がない。ここでワンクッション入る。西条に「これは恋でしょうか?」と問いかけて、ようやく恋だと確信を得る、そのゆっくりとした歩みの描かれ方が本当に丁寧で素敵だった。作中の表現をなぞるなら、「彼女の恋は美しい」と言えます。
何より、このシーンの平さんの演技が秀逸でしたね。

 

一方で西条は、初めて美しく見えた恋の光に、なぜか戸惑いを隠せない。
そんな彼の心情を知る由も無く、北代は彼の電話を無視して恋のライバルであるはずの東雲宅でパジャマパーティと称した飲み会で恋バナに没頭し、宿木は悩み相談を装って自宅に押し掛けてくる。
こういったコメディ的な要素もまた、この映画の魅力だったと思う。
あと、初めて東雲邸に向かうシーンで、北代の表情が徐々に疲労濃くなってくるのが面白かった。この距離を移動するぐらいなら宅飲みより安く飲む方法あったんじゃね?って思ってたら、同じことを監督が語ってましたね。
あと、東雲が「祖母のお古」って言ってた服、遺影の中でおばあちゃんが着てた服ですよね?

 

宿木が恋の光を放つ(あるいは光が消える)タイミングの描かれ方も良かった。
西条が「北代に会おうと思った」と言えば光り、「約束していたわけではない」と説明した途端に光は消え失せる。
なんともシンプルな描写だけど、これを見ただけで彼女が「他人の恋を奪うことこそ恋」だと認識していることが理解できます。

 

夜の静かな庭園で、西条と北代が会話するシーン。
ここで西条から悩みを相談された北代を演じるなーちゃんが素晴らしかった。特に視線の動かし方がね。揺れ動く乙女心を余すことなく表現できていて、本当に北代という女の子が実在している気になりました。
監督の裏話で、「北代が眼鏡を掛けているのは前日にたくさん泣いたのを隠すため」という設定を後で知ったのだけど、眼鏡を掛けている場面は二度あって、
路面電車の中で、西条から「東雲を紹介して欲しい」と頼まれた翌日
・この庭園で、西条から「(東雲のことを)好きなのだと思う」と打ち明けられた翌日
いずれも直接的な泣き顔は映らないけど、言動とは裏腹に、明らかに快く思っていない北代の心情(動揺や、涙を堪えているであろう雰囲気)が読み取れました。
なーちゃん、本当に良い役者さんになったなぁと思います。

 

そして西条が見つけた「光る絵」の作者・央(なかば)との面会で物語は大きく動く。央もまた、恋の光が見える人物だった。
光の謎について話し合う中で更に惑う西条に、央が言う。

「恋って人それぞれじゃないですか。(私の周りには)宝塚の人やアイドルに本気で恋してる子もいますよ」
「(憧れの人を想うと)嬉しくて楽しくて、踊りたくなっちゃうんです」
「嬉しくて楽しいから、恋する乙女はキラキラ光るんです!」

特に最後の言葉が作品中で一番刺さった。

そう、恋は嬉しくて楽しいんだよね。

恋は理不尽さも内包していて、時々苦しくなったりするけど、本来は心弾むものだと思う。
西条の特殊能力はファンタジーでありながら、「恋をすると光る」という説明は、現実世界に於ける、ごくごく自然な理であるかのように僕の中に浸透してきました。

央を演じた伊東蒼さん、抜群の演技力でしたね...!

 

そして央には、北代も光って見えた。その言葉で北代の恋心に気付いて動揺する西条。
後には退けず、西条に想いを伝える北代。「光っていなくてもセンセのことを好きだった」と語るその表情が切なげで可愛くて好きです。←

そういえば、直前のシーンで「このテーブル以外で光っている人は~~」という会話があって、これは西条が央の先輩への恋を気遣ったものでしたが、同時に、この瞬間まで北代の光への言及を避ける伏線にもなっていたのですね。

この場面、周囲の雑踏の音がスーーッと消えていって、しばらくの静寂の後に再び雑踏の音が戻ってきましたが、静寂が永遠に続くのではないかと思う程の衝撃でした。
正直に言うと、僕には完全な静寂ではなくて、光自身が放つ「キラキラ」とも「燦燦」とも表現できない煌びやかで不思議な音と、北代の心臓の鼓動が聞こえたような気がしました。加えて言うと、映像エフェクトではなくて本当に彼女が光り輝いて見えました(ちなみに毎回ここで泣く)。
映像が終始美しい本作品の中でも、この場面が際立って美しいと感じました。

 

終盤の西条と東雲のデート時には、ネガティブな感情も吐露して、綺麗なだけじゃないリアルな恋を描いていたと思います。
また、東雲は浮世離れしていて凛として美しい、ある意味とても現実離れしたキャラクターだけど、酔い潰れて吐く描写で、現実味というか人間味を感じました。
映画鑑賞経験の少ない僕としては、ヒロインがゲロ吐くシーンをあそこまでハッキリ流した作品は「猟奇的な彼女」ぐらいしか思い浮かばない...(関係無いけど、なーちゃんも猟奇的な彼女を好きでしたね)。

 

西条が思いの丈を東雲に伝えるためのメッセージをノートに書き出す場面。
東雲と北代の顔が浮かんで、何を書くべきか悩む西条。
ここで宿木の「落ち着くおまじない」を思い出して実践したのが良かった。宿木が当て馬などではなく、れっきとしたヒロインの1人であり、彼女との出会いも、西条にとって大きな意味があったのだと思えた。
(ここで「前」という文字を書き始めたんで「前から」とか「前に」とかで始めるのかなって思ったんだけど、後で東雲が読んでる時に最後のページに「草々 西条」って見えたから「前略」ですね...。)

 

「私の恋はセンセにとって光じゃない」と北代は言ったけど、西条は「お前(北代)は光そのもの」だと言った。
恋の光に振り回され続けてきた男は、ここに来て、可視化できる光だけじゃなくて、自分の人生に彩りを与えてくれる存在そのものを「光」と呼び、それ即ち恋だと認識した。発想の転換だ。
ここでも「自分が恋だと認識したらそれが恋」だという宿木の持論が伏線として活きてくる。

西条は東雲の光に対しては「憧れ」の感情を抱いたのであり、「触れ難い」ものだと感じていた。でも彼は、序盤で「恋」のイメージを「ただ会いたい。ただ触れてみたい」と語っていた。思えば、これが伏線だった。「触れ難い」と認識した時点で、西条の考える恋ではなくなったのですね。

 

クライマックスの結論に至るまでの遠回りが、誠実すぎるがゆえに、切なくて、痛々しくて、もどかしくて、愛おしくて堪らなかった。そうして描かれた彼らの瑞々しい葛藤もまた、自分が若かりし頃に抱いていた恋心の一部であったことを思い出させてくれました。

本当に、本当に、素敵な物語に触れることができました。ありがとうございました。

 

--------キリトリセン--------

 

<余談>

主要キャスト5人の名前には、方角を表す文字が入っていますね。
意味があるように思えたので、その辺も書き出してみようと思います。

ただし、原作者が意図したものかどうかは解りませんし、自分のこじつけ的な見方も大いに含まれていることは先に断っておきます。

 

古代中国に「五行」という思想があります。
この五行思想は、日本にも風水や陰陽道に形を変えて入ってきています。なんて言うと、まじないや占いの類だと思うかも知れないけど、違います。これは哲学、あるいは自然科学の類。ものすごくざっくりと言うと「自然現象を観察して、ありとあらゆる物質や現象を五つの要素に分類する」考え方です。

五つの要素とは「木、火、土、金、水」です。そして、例えば「木」気に属するものとして、方角なら東、色なら青(緑)、季節なら春であると定められています(ちなみに「青春」という言葉の語源はここから来ている)。

そんなわけで、それぞれの方角と、それが属する気と、さらにその色と季節は
西(西条)→金→白→秋
北(北代)→水→黒→冬
東(東雲)→木→青(緑)→春
南(宿木)→火→赤→夏
中央(央)→土→黄→土用(節分)
となっています。

こうして見ると、各キャラクターの性格や役割について、暗示的だなと思うのです。

 

黄色とも白色とも判然としないような恋の光が見えるのが西条と央の二人だし、北代は光っていません(=黒)。
東雲は西条に鮮烈なインスピレーションを与えて物語が動き始めるきっかけになります。夜明けの象徴である東や、一年の始まりである春は、その役割にぴったりのイメージだと思います。また、あの凛とした佇まいも、青や草木を思わせます。お天気雨を避けて木陰に入って風に吹かれるシーンも、そこに連なるイメージを強くしました(風も木気に属するとされている)。
宿木の情熱的・直情的な性格は、まさに火のイメージと言えるでしょう。
主人公と他のヒロインが四方に分かれているのに対し、央は中央に鎮座します。そして季節は四季ではなく、土用です。土用は季節の境目であると同時に、四季をスムーズに移行させる作用があるとされます。この季節に相当する属性は、物語を動かすキーマンである彼女に相応しいと言えます。

そんなわけで、キャラクターのイメージに合ったネーミングだなと思いました。

 

西野七瀬 #神尾楓珠 #平祐奈 #馬場ふみか #伊東蒼